#003 函館本線大沼/七飯間でおきた保線車両の暴走
こんにちは、杉さんです。
先日のことですが、2021年6月7日に2件の鉄道事故がありました。
一つは小生の自宅近く、都営地下鉄浅草線中延駅で日本オリンピック委員会経理部長による人身事故です。
所轄の荏原警察署の発表によれば、自殺の可能性が高いとのことでした。
しかしご家族の証言によれば、自殺はありえない、事故ではないのか、または一部の報道にあるように何者かによって殺害されたのではないか、との憶測もささやかれています。
東京オリンピック開催まで約1か月となった日に起きた悲劇、関係者による突然の死には、黒い金銭の流れも付きまとっているようにも見られています。
しかしながら本件に関する考察については、とりあえずのところは他の方にお任せするとして、今回はもう一つの話題に移りたいと思います。
二つ目の話題は、テレビの全国版のニュースにも取り上げられていましたが、 JR北海道函館本線の大沼駅~七飯駅間で、夜間の保線作業中に発生したインシデント (あわや大惨事となっていた可能性もあった事態) です。
作業列車での移動中、大沼駅付近で、列車の速度を落とそうとしたものの、ブレーキが利かず、そのまま時速80㎞で仁山駅と新函館北斗駅を通過して、約7㎞先の七飯駅手前まで暴走、平坦路でようやく自然停止をしたということでした。
幸いにも、負傷者はなく、また物損もなかったようでした。
でも、鉄道事故に少々うるさい筆者にとっては、決して見逃すことのできない一件でありました。
それは、「ヒヤリハット事故」にすぎない今回のこの一件は、JR北海道のみならず日本の鉄道事故の集大成であったようにも思えたからなのです。
見逃すことのできない理由には次の5つが挙げられます。
1、JR北海道で発生したこと
2、大沼~七飯間で発生したこと
3、下り勾配で発生したこと
4、ブレーキの故障が原因であったこと
5、保線作業中の事故であったこと
でした。
今回のインシデントを振り返る前に、筆者は日本の鉄道事故、過去の実例465件を一つひとつ分析してみました。
暇人だからこそできることなのですが、
その結果、発生状況、場所、原因等がおおよその傾向として下記のように層別されました。
状況
・他の列車との衝突・追突事故
・自車の事故:脱線および脱線転覆事故
・対人間の事故
・対物の事故
・火災事故
場所
・駅構内の事故
・分岐器(ポイント)上の事故
・踏切内の事故
・傾斜地の事故
・隧道または橋梁およびその周辺での事故
・通常の敷地内を含むその他の場所の事故
原因
・速度超過による事故
・自然災害による事故
・列車もしくは施設の故障による事故
・悪質な原因による事故:重大な過失、もしくは故意・犯罪による事故
・その他
ともあれ、過去の実例と今回の事案を照らし合わせて見て見ましょう。
1、JR北海道で発生したこと
2、大沼~七飯間で発生したこと
最近10年間にJR北海道管内で発生した事故等の状況を見て見ましょう。
2011-05-27 石勝線占冠~新夕張でトンネル火災、避難誘導マニュアルの不備
2012-02-16 石勝線 東追分駅構内で暴走、脱線転覆
2012-04-26 江差線でコンテナー列車が脱線、線路の整備不良が原因
2012-09-11 江差線釜屋~泉沢コンテナー列車が脱線 軽荷重時の共振現象
2012-09-18 千歳線新札幌駅でDML30系エンジン冷却水・潤滑油の漏洩2013-2013-04-08 函館本線八雲駅でDML30系エンジンから失火
2013-07-06 函館本線鷲ノ巣~山崎でDML30系エンジンから失火
2013-07-15 千歳線でねじの緩みにより、配電盤から失火
2013-07-22 根室本線でナットの緩みから、エンジン破損
2013-08-17 函館本線で八雲/山越 河川の氾濫、流木と衝突、脱線
2013-08-18 函館本線東山/姫川で線路内に土砂流入、被害はなし
2013-09-07 札幌運転所、機関士がATSを故意に破壊、操作ミス隠蔽のため
2013-09-19 函館本線大沼駅構内でコンテナー貨車4両が脱線横転、
2013-09-24 普通列車より発煙
2013-09-30 自動列車停止装置を破壊
2013-10-01 函館本線で工事区間を時速35㎞速度超過して走行
2013-10-31 石北本線で「オホーツク」よりブレーキ部品が脱落
2013-10-31 石北本線でATSを作動させないまま運行
2014-06-22 江差線でコンテナー列車の脱線 新聞ロール紙の偏荷重
2015-04-03 青函トンネル内で火災、124名救出に5時間以上を要した
2015-12-27 函館本線 伊納/近文間嵐山でトンネルトンネル内火災
2017-02-23 室蘭本線で脱線、重要保安部品の締付け不足が原因
2018-02-24 石勝線トマム駅構内で脱線
2018-11-09 千歳線新札幌駅で信号機が転倒、固定ボルトの脱落が原因
2021-06-07 函館本線大沼~七飯で保線車両の暴走、ブレーキ故障が原因
【Wikipedia:日本の鉄道事故(2000年以降)より引用】
Wikipediaに掲載されただけでも25件の事故またはインシデントが報告されています。
ただ一つだけ、これらのなかで唯一不幸中の幸いなことは、死亡者が一人も出なかったことで、被害者は石勝線と津軽海峡線の二件のトンネル火災の負傷者41名だけでした。
とは言え、2013年9月19日に発生した函館本線大沼駅構内で貨物列車が脱線転覆した事故から、とんでもない事実が明るみに出ました。
- 事故の原因はレール幅に37㎜の狂いがあったこと
- その狂いを知りながら、修復をせず、1年間放置していたこと
- 他にも多数の異常があり、放置していたこと
- 放置だけでなく、軌道検査データを改竄し、それが常習化されていたこと
- それらのデータを運輸安全委員会に提出していたこと
でした。
このことに業を煮やした国土交通省は、死傷者を出さない事故としては異例の措置として、特別保安監査を実施しました。
そして、当時の内閣官房長官で、現内閣総理大臣である菅義偉氏が、国土交通大臣の地位を超越して、JR北海道を非難する異例のコメントを発してしていました。
いわゆる 「鉄道族議員」 の代表としての発言であったと推察します。
2021年5月10日衆議院予算委員会における内閣総理大臣としての答弁。 そのころは辞任間近でしどろもどろでした |
さらに、JR北海道にとって、屈辱的ともいえる内容の指示が国土交通省から出されました。
本件と前後する形で、当時頻発していたキハ183DML30系のエンジントラブルの改善対策を実行するために、並列的な立場にあるはずのJR東日本からの指示・命令を仰ぐ旨を言い渡されたことです。
JR北海道はそれらを遂行するために、特急列車の減速や、ダイヤの減便を余儀なくされましたが、鉄道事業者が安全対策のためこれらの施行をすることは、極めて異例のことでした。
3、下り勾配で発生したこと
4、ブレーキの故障
下り勾配をブレーキが故障した列車が暴走するという事例は、戦後の混乱期から1970年代前半にかけて近畿日本鉄道で多く見られました。
特に、1948年に発生した生駒トンネルから河内花園駅における暴走・追突事故は、戦後の物資不足からブレーキホースを撤去してしまうという、今日では考えられない魔改造が横行していたことが直接の原因として考えられていました。
その結果として、49名の尊い命が奪われたのでしたが、時代は73年経った今でも、同じようなことが繰り返されているとは信じたくないものです。
因みに、日本には183,000台の大型ダンプカーが登録されています(平成30年国土交通省発表)。
その中の1台にでもブレーキホースが繋がれていない、ペダルを床まで踏みこんでもウンともスンともいわない、そのようなことがあっていいのでしょうか。
考えただけでもぞっとします。
5、保線作業中の事故であったこと
保線作業員、救急隊員が線路内に立ち入っての作業中に、事故に遭遇することは、件数としては決して多くはありませんが、内容は見逃すことはできません。
線路内での作業中の事故は、1964年以降、今回の1件を除き6件が報告されていますが、それらすべてに複数の死亡者が出ており、その重大さ、悲惨さが報告書の文面からも伝わってきます。
そしてすべての原因が、連絡の不徹底、監視員の不注意等のヒューマンエラーでありました。
実は筆者自身も学生時代にアルバイトで保線作業を経験したことがあります。
1970年代、今から50年以上昔の話です
東海道本線の熱海駅や小田原駅での夜間の作業で、目の前を貨物列車が猛スピードで通過してゆくものでしたが、憶測ですが時速100㎞もしくは120㎞は出ていたように思います。 眠気と疲労で足元がふらつきながら、通過してゆく列車の風圧で何度も吹き飛ばされそうになったものでした。
今となっては時効なので申し上げますが、あの時の貨物列車の機関士さんの何人かは酩酊状態の上、居眠り運転をしていたのではないかと考えています。
1982年に名古屋駅、1984年に西明石駅で特急列車の飲酒運転事故が連続しましたが、それらより10年少々前のことです。
さらには旅客列車ではなく貨物列車、自然に考えて飲酒運転はあってもおかしくありません。 恐怖が昨日のことのように甦ってきます。
列車を運転する側の人たちには、いつ、どこで、何の作業をしているか知らされているとは思いますが、昼夜を問わず、それらの配慮が列車の運行に反映されていたとは、正直言って考えにくいものでした。
また、保線作業と言っても、筆者が携わっていた事業所は、当時の国鉄でも、他の電鉄会社でもなく、二次三次もしくはそれ以下の下請け会社であったわけでして、言いにくいことがですが、管理も極めて杜撰なものでありました。
夜間の作業の前に熱燗二本、猛暑の昼食時に生ビール大ジョッキ一杯なんていうことは日常茶飯にあったものでした。
ただ、念のために申し上げますが、今回の函館本線の保線作業員の方々が仕業前に飲酒されていたとは、決して思ってはいません。 はい!
今回、2021年6月のインシデントの五つの要因については、以上のように考えましたが、何度も言うように過去の教訓が今一つ生かされていないように思えてなりません。
その理由の一つは、どちらかと言えばいいことなのかもしれません。
2011年以来、25件の案件が報告されていますが、被害が発生したのは石勝線トンネル火災による負傷者39名と、津軽海峡線トンネル火災による負傷者2名の合計41名だけで、前述のとおり死者は一人も出ていません。
勿論、事故の規模に見合った死傷者数が出ているべきだったとは申し上げません。
とはいえ 「結果オーライ」 がすべての鉄道員たちを油断させてしまった。
もしくはあるべき緊張感を忘れさせてしまった。
もしそうだとしたら、それはなんとも皮肉なことではないでしょうか?
JR北海道のもう一つの懸念事項として、構造的な赤字体質が考えられます。
それは、あなたがJR北海道の列車に乗ればすぐに気が付くことだと思います。
列車に販売員の乗務も、自動販売機の設置もありません。
売店や立食のスタンドがあるのは、札幌駅や旭川駅などの主要ターミナル駅3~4カ所だけで、他はどこにもありません。
特急 「北斗」 に乗って、函館から札幌への移動に約4時間かかります。
乗車する前に飲み物、食べ物を買いそびれてしまうと、車内でも、途中駅でも調達することができません。
その時の空腹感からくるイライラは実際に味わってみれば、お分かりいただけると思います。
さらには、昨今のコロナ禍の影響で、中国人をはじめとするインバウンド需要の激減が、業績の悪化に追い打ちをかけていることがはっきりと伺えます。
他の鉄道会社は、JR五能線やJR只見線を例にすれば、それぞれ独自の集客対策に力を入れていますが、JR北海道にはそれがありません。
わかりやすく言えば、JR北海道=貧乏会社・ダメ会社というイメージが北海道民および利用者の固定観念として根付いてしまっています。
そしてそれらが、JR北海道社員の一人ひとりに同じように根を張り、さらには「負け犬根性」 というものに置き換わってしまっていたら、なんともやりきれない気持ちです。
さらに、一連の事故、不祥事が拍車をかけました。
この会社での赤字の最大要因が、北海道新幹線にあると言われています。
本来は会社自身と地元の活性化を目的として、満を持して開通を待たれるハズなのですが、歓迎ムードは今一といったところ、実態は地元の人たちの足を引っ張っているようにも思えます。
杉さんの大予言
以下は筆者が勝手に考えたフィクションです。
絶対にあってはならないことは、筆者が一番に考えていることです。
あらかじめご承知おきください。
『北海道新幹線下り函館行きはやぶさ号が青函トンネル内で脱線転覆、出火。
消火、避難誘導マニュアルがるものの全く機能せず。
暗闇を逃げ惑う乗客の列に、上り東京行き列車が突入。
避難中の下り列車の乗客50名が轢死。
さらに双方の列車が激突、乗客乗務員550名が死亡、300名が重軽傷。
1985年の日航ジャンボ機墜落事故を凌ぐ、史上最悪の交通災害となった。
1962年の国鉄常磐線三河島事故を大幅に超える、日本最悪の鉄道事故となった。
原因は保線作業における、レールの締結作業の手抜きと判断された。』
なんていうことがあったらどうでしょうか。
こんなことは、あってはならないもの。
あろうはずがないもの。
新幹線の無事故神話は覆るはずがない。
誰もがそう思うに違いありません。
馬鹿げた作り話だと言われることは百も承知です。
でも考えてみてください。
福島原発の爆発事故、いったい誰が予測したでしょうか
福知山線の脱線転覆事故、この事故の原因は制限速度60㎞のカーブのところを107㎞で通過したためと言われています。
20歳そこそこのヤンキー君が高速道路上で犯した事故ならともかく、天下のJR西日本で厳しい訓練を受けた運転士さんが1000人の命を預かった職務中のことです。
47㎞の速度超過があったなど誰が信じたでしょうか?
そうです、この後に申し上げますが、「無事故神話」 「安全神話」 という名の迷信はいつか崩壊するのです、しかも最悪の形でもって・・・・・。
そしてつい先日のこと。
千葉県八街市で飲酒運転による小学生5名の死傷事故がありました。
これも絶対にあってはならない、あろうはずがない事故です。
でも、現実に起きているのです。
千葉日報より引用 |
過去、法規制が今ほど厳格ではなかった時代に、飲酒運転による重大な事故が何回も繰り返されていました。
そしてそれらのいくつかは、大きな社会問題としても取り上げられました。
やがて、それらの教訓から、法令が整備され、罰則が強化されてからは、飲酒運転という名の重大犯罪は、社会から葬り去られたものとばかり思われていました。
でも、悲しいかな、罰金が50万円になっても100万円になっても、懲役刑が20年になっても30年になっても、お酒を飲んで車を運転する人は後を絶ちません。
その結果として、誰かが辛い、悲しい思いをしなければならないのですが、彼らにとってそんなことはどうでもいいことなのです。
今の自分がよければ、すべてそれでいいのです。
事故を起こしたトラックの運転席には、コンビニの袋に詰め込まれた缶ビールやカップ酒が置かれていました。
飲酒運転が日常的に繰り返されていたようです。
令和の時代となった今日でも、そんな亡霊みたいな人がいまだに存在するのです。
筆者もお酒を飲むことは決して嫌いではありません。
ローカル線の車窓から、四季折々、移りゆく景色を眺めながら、
名物の駅弁をパクつきながら、
小淵沢駅の名物駅弁「元気甲斐」とワンカップ大関と小海線野辺山駅付近の車窓からの景色 |
ワンカップ大関をちびりちびりと嗜む。
私とっては至極のひと時です。
でも、子供たちを蹴散らしながら、通学路を我が物顔で大型トラックを暴走させる。
それも酒に酔った勢いで・・・・。
私には考えられません。
何を言いたいのか、世の中には絶対に安心・安全、絶対にありえない、
そんなものはないということです。
北海道新幹線の火災事故、こんな馬鹿げた作り話は悪ふざけの範囲だけにしたいものです。
2021年8月30日