アスペルガー症候群という言葉との出会い
私がアスペルガー症候群であるとの診断を受けたのは2013年3月のことでした。
今から10年前のことです。
蒲田駅前にある南晴メンタルクリニックという心療内科で、越後屋先生という当時40代半ばぐらいの聡明な印象の女性の医師でした。
心療内科を受診するきっかけは、当時勤務していた商事会社で担当をしていた経理・財務の仕事上でのケアレスミスが異常に頻発していたため、還暦を前にして認知症であるとかアルツハイマーであるとかを疑ってのことでした。
どのようなケアレスミスかといえば、外出のついでに他の人から頼まれた買い物を忘れてしまった程度のことは毎度のことでした。
自分の車をコインパーキングに止めて、戻ろうとしたときに駐車場の場所がわからなくなってしまったとか。
致命的であったのは、会社の支払方法が変わった時に、その手続きを何か月も放置したまま何もせず、主要取引先全社に対しての不渡という前代未聞の不祥事を招く寸前まで導いたということでした。
その他にも、なぜか携帯電話を3日に一度自宅に置き忘れるたり、ゴルフ場で預かったマスターキーを挿したままその場を離れたりとか、出張先に筆記用具を忘れたりとか、そんなことが一度だけではなく、毎度のように繰り返して家族や友人に迷惑をかけたり、自分自身に腹を立てたりの連続でした。
30分から一時間程度の問診があり、仕事の上や日常生活の中での出来事、失敗談を一通り説明しました。
問診を終えてから3桁の足し算や引き算、動物や花の絵札を見せられて出された順番に答えるというテストも行いました。
その結果として、脳の機能には異常がなく心配していた認知症やアルツハイマーの症状はなくほっとしました。
その代わりに下された診断が冒頭のアスペルガー症候群という、その時初めて聞く名前の症状でした。
先生からの説明によれば、あまり気に病んだりする必要はなく、人それぞれの個性として割り切ればいいものだと教えていただきました。
歴史上の人物や天才といわれた人が多く、むしろそのことであることを前向きに捉えるべきだ、との助言もいただきました。
自宅に戻りインターネットで検索してみると様々な情報が出てきました。
代表的なものとしてWikipediaの記事を引用させていただくとこう書かれています。
アスペルガー症候群(アスペルガーしょうこうぐん、Asperger Syndrome, AS)、アスペルガー障害(Asperger disorder、AD)
知的障害を伴わないものの、興味・コミュニケーションについて特異性が認められる、ヒトの発達における障害。オーストリアの小児科医のハンス・アスペルガーにちなんでつけられた。
特定の分野への強いこだわりを示し、運動機能の軽度な障害が見られたりすることもある。しかし、古典的自閉症に見られるような知的障害および言語障害はない。
発生原因は不明である。効果が示されたと広く支持される治療法はない。放っておくとうつ病や強迫性障害といった二次障害になることがあるとの指摘もある。
注意欠陥・多動性障害(ADHD)
衝動性・過活動・不注意などの症状が確認される。典型的には生まれつきのように症状が存在する。一般的にみられる症状であるため、症状が合致するだけでは不十分であり、若年で発症して継続し、発達上不適切に持続しており、特定の状況だけで見られるのではない必要がある。
DSM-IV-TRでは症状に従い、以下の3種に下位分類がされる。
多動性・衝動性優勢型
混合型
不注意優勢型
歴史上の人物としてアインシュタインやエジソン、織田信長や坂本龍馬の名前が挙げられていました。
現代人の中ではビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズ、長嶋茂雄、イチローの名前もありました。
実例として挙げられた方々との共通点は私にははかり知ることができませんが、症状を見る限りほとんどすべての特徴が当てはまることに驚きました。
特定の分野への強いこだわり、コミュニケーションについての特異性、運動機能の軽度な障害、衝動性、不注意、少なくともこれらの項目はすべて該当するものと思われます。
「ヒトの発達における障害」という文言には一抹の抵抗を感じますが、天才なるが所以の特徴であると考えれば、それはそれで悪くはないものです。
ただ、残念に思うことは、これらの学説を知る機会がもっと早期にあったとすれば、私の人生ももっと違ったものになっていたのではないか、そんなことを考えてやまない今日この頃です。
2019年4月吉日